株式会社スタッフロールは、多様なバックグラウンドを持つ方々とのつながりの中から、これからの時代を生きるひとりひとりの新しい在り方を模索していきます。 新年度から新たな活動の一つとして、「これからの生き方を考える会」をスタートさせました。
第1回テーマ「これからのコミュニティの在り方について」
前編のレポートはこちら
今回の話題提供者は、スタッフロールのウェブサイト制作を引き受けてくださったWEBLIC合同会社 代表の坂本 乾さん。
前半は、坂本さんが考えるコミュニティの在り方や、日々感じる疑問についてお話しいただきました。後半は参加者を交えた活発な意見交流の様子をお届けします。
ここからは付箋を活用しながら、参加者それぞれが思い浮かべる「コミュニティ」のイメージについて、フリーセッションで進んでいきます。
日本の都市生活は“暮らす場”と“働く場”が別々になっている
坂本さんは最初に『風の谷のナウシカ』(原作:宮崎駿)を挙げました。複数のコミュニティが登場し、人物どうしの関係性を通じてコミュニティとの距離感や所属のスタンスが描かれています。人にスポットを当てて対話していくうちに、①コミュニティのウチとソトを自由に行き来できる人②ウチに留まり続ける人③ウチに入らず(または入れず)ソトをぐるぐる巡る人、大きく3つのパターンが現れてきました。
そこで自分の暮らす地域の話題へ。参加者に縁のある名古屋、福岡、岐阜が挙がりました。
スタッフロールの拠点・名古屋を代表するコミュニティといえば「喫茶文化」。訪問客のある場合 “お茶しよう”と誘って喫茶店やカフェで会う傾向があります。家庭ではなく地域の中に、出会いやもてなしの場を持つ感覚です。行きつけの喫茶店やカフェは、一人暮らしや高齢者の方にとって、くつろぎの場に留まらず見守りの役割も担っています。
また、福岡出身の参加者さんによると、九州の出身者は一度県外に出て働き、一定期間が経つと故郷に戻ってくる傾向があるそうです。それを「帰ってきんしゃい文化」と表現します。「帰ってきんしゃい」とは「戻っておいで」の意味。自分も故郷に戻りやすく、帰ってきた人を受け入れやすい土壌があるのでは?との見立てでした。
最後に、岐阜県各務原市は県外からも注目されている地域の1つです。2008年から始まった音楽フェス「OUR FAVORITE THINGS」からムーブメントの端緒が感じられ、2016年にオープンした「KAKAMIGAHARA STAND」を運営する「かかみがはらくらし委員会」を中心に、市民活動がいくつも生まれています。各務原市在住の参加者さんもそのコミュニティに加わっている1人。「多世代・多領域の仲間がゆるやかにつながっている」といいます。サイトやSNSでこまめに発信される情報からは、思わず参加したくなる楽しそうな雰囲気と人の賑わいを感じます。
ここで坂本さんからの言及が。「都市部に暮らす日本人は、地域への執着度が薄く感じられる。コミュニティは、自分が最も長く居るエリアに作りやすいはず。でも、都市部に暮らす人の多くは“暮らしの場”と“働く場”が別々になっているよね。」
暮らす場・働く場の乖離と新しいコミュニティの在り方には、深い関連がありそうです。
なにげなく使われている言葉「コミュニティ」。本来の意味とは?
コミュニティという言葉が飛び交っていますが、もともとは何を指していたのでしょうか。日本で「コミュニティ」という表現が公に登場したのは、1969年に発表された報告書『コミュニティ~生活の場における人間性の回復~』(国民生活審議会調査部会)と言われています。当時の資料によると、
「生活の場において、市民としての自主性と責任を自覚した個人および家族を構成主体として、地域性と各種の共通目標を持った、開放的でしかも構成員相互の信頼感のある集団」
コミュニティはこのように定義されています。
背景として、農村での生産構造・生活様式が強く反映される共同体から、個を重視した都市の生産構造・生活様式への移行について記述されています。
現在、コミュニティという表現が使われる場面はあまりに広く、定義も多岐に渡っています。大切な前提として、コミュニティは《生活の場に存在し、外に開かれていて、主体性と信頼感のある集まり》であることを押さえておきたいと思います。
海外では「活動に参加すること」が目的、日本では「人に会うこと」が目的になりがち。
地域性の違いから、「仲間に入ると楽しめるけれど、コミュニティに参加するまでのハードルが高いよね」と話題になりました。
スタッフロールでは、うつ病をはじめとする精神疾患の方の社会復帰をサポートしています。精神疾患や生来の生きづらさによって、コミュニティと疎遠になってしまう方が多くいらっしゃいます。
日常的に国内外を行き来する坂本さんによると、「海外では“活動に参加すること”が目的、日本では“人に会うこと”が目的になりがち」。例えば、全く知らない人たちが参加するイベントと顔見知りが参加するイベント、どちらが参加しやすいでしょうか?行動の動機が、人間関係に依っている傾向はないでしょうか。
また、コミュニティへの所属だけではなく「1人でいること・1人で過ごす時間」はネガティブな側面だけでしょうか。
フィンランド在住の研究者から、フィンランドでは幼少期の段階から「一人であることを大切にする」「自分で考え行動することを促す」と教わりました。保育園には1人になれる場所が設けられています。子どもたちが創作する時間の中で「孤立した時の自分の味方」を問うなど、日常に自立した個を育む工夫がちりばめられていると聞きました。
自立した「個」によって生まれる全体としての「コミュニティ」。まさにウチとソトを行き来するようなイメージです。
まだまだ話は尽きませんが、第1回目はここまで!
今回のセッションでは、新しいコミュニティの在り方を探るヒントとして、出入りのしやすさ/ゆるやかなつながり/個と全体/主体性などのキーワードが出てきました。
“自分からコミュニティに入っていくことが難しい”と悩む参加者のお一人は、「常々考えていたことが、目の前でどんどん形になっていく感じがした。自分の考えが整理できて、参加してよかった。」と話してくださいました。
この場そのものが、新しいコミュニティとして成長しそうな予感です。
「これからの生き方を考える会」は、まだまだ続きます。
第2回目は「豊かさの得られるコミュニティとは?」、第3回目は「コミュニティとお金の関係」について、それぞれのセッションの様子をお知らせします。
次回のレポートもどうぞお楽しみに!
(text:エスラウンジ 松永結実)
今回の対話から生まれた疑問
・コミュニティに属すること=幸せ…?
・なぜ、困っていたら助け合うコミュニティは実現しにくいのだろう。
・出入りや行き来が容易なコミュニティは存在する?あるとすれば、それはどんな在り方?
テーマを読み解くキーワード
ウチとソト,イエとムラ,風の谷のナウシカ,喫茶文化,帰ってきんしゃい文化,かかみがはらくらし委員会,暮らす場と働く場の乖離,農村から都市へ,孤立,フィンランド,個と全体,主体性,ゆるやかなつながり
【これからの生き方を考える会】は全6回のレポートでお届けする予定です。
これからの生き方について共に考えてくれる方、募集中!
「最近の悩みを話したい!」
「こんな地域になったらいいな!」
「この社会課題をなんとかしたい!」
様々な想いを持った方のご連絡をお待ちしています。
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主催:株式会社スタッフロール
会場:ビューズ@名駅 https://view-s.jp/
愛知県名古屋市西区名駅二丁目25番21号ベルウッド名駅1F
問い合わせ先:052-462-1608
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